狭筵

はい

友人の宇野

友人の宇野(仮名、もしかしたら仮名じゃないかもよ?)は、夏目漱石『こころ』のハイライトシーン、先生がKが自殺しているのを発見したシーンの創作モノマネ? が大好きな男だった。

原文では襖を開けて戦慄し、Kの遺書を見つけ、それを読む先生。宇野はそこに創作を加える。

むくり起き上がり「おい」と声を出す。ここまでは原作通りなんだが、襖を開けた後いきなりMMRキバヤシみたいな大仰なポーズをとり「け、Kええええええええええええええええええええええええええッッッ!!!!!!!!!」と絶叫をする。

なかなかこの面白さを文章で伝えることは難しい。多分面白い部分は、叫ぶんだとしたら本当は本名で叫ぶんだろうけど、手紙の通りの名前「K」で絶叫する部分にあると思う。その他、ポーズや表情や台詞の感じがとてもツボにはまる、謎モノマネであった。

 

 

宇野のことを思い出して夏目漱石『こころ』をぱらぱら読みなおした。いろんな人がすでに指摘してるんだろうけど、先生はあんなにしてまでしてお嬢さんを得たのに、お嬢さんに対してひどい仕打ちをする。Kへの贖罪のためだけに、妻となったお嬢さんに優しく接するのだ。

お嬢さん(妻)ももちろん全部は解らないけれど、先生のそうした姿勢に感づいているようだ。「私を理解し得ないために起るぼんやりした稀薄きはくな点がどこかに含まれているようでした」という先生のお嬢さん(妻)への分析もある。「男の心と女の心とはどうしてもぴたりと一つになれないものだろうか」なんてお嬢さん(妻)が先生に言っていたりもする。この部分に対し、先生は全くリソースを割かない。「私と妻とは決して不幸ではありません」とか言ってる。

このように後半Kが自殺してからは特に読んでて苦しい。

 

いっつも、うらみっこなしで、下宿でお嬢さんにどっちが好みのタイプか撰んでもらえば良かったのにって思う。