狭筵

はい

カエル

カエルを本格的に飼っている知人がいる。

でかい水槽に土を盛り、なだらかに坂を作り、坂の下には水場を配置する。オタマジャクシから飼っており、オタマくんは自然に陸上に上がるよう設計されている。

そうして大人になったカエルは、でかい水槽の中で悠々と暮らしている。森を再現した水槽の中での暮らしは快適そうだ。カシワの葉っぱなど、大きな遮蔽物を多く設置しカエルは普段はその下に隠れている。コケや雑草も生えている。たまに粘菌も出てくる。

カエルは完全に姿を隠すこともあるが、遮蔽物の下からちょこっと顔だけ覗かせることも多い。たくさん飼っているんだけど、どのカエルも同じように穴倉からちょっと顔を出すのがお気に入りのようだ。そうすることで外敵から逃れやすいのだろうか。その選択が、現在のカエルの繁栄に繋がっているのだろうか。よくわからん。

餌は釣りのサシムシを使う。サシムシ(ウジ)からハエになって、カエルの餌になる。夏にはコオロギを捕まえてくるそうだ。

サシムシから成長したハエが水槽内に現れると、普段隠れているカエルくんもこの時ばかりは、と水槽の表に出てくる。小さな水場の小さな岩場に立ち獲物をじっと見つめてチャンスをうかがう。水槽はバカでかいので、なかなかハエは下りてこない。じっと待つ。どのカエルも同じような目線で、じっと待つ。わんぱくなカエルは、たまにサシムシの入っている釣り餌の袋に乱入し、ハエを食べ荒す。

カエルの動きは、こうして基本的には愚直で水槽で飼われようが自然の中だろうが変わらないだろう。安全か否かのみが違う。

人間は色々意識とか言語とか発達させてきたわけだが、こうした愚直さの軛からどこまで遊離して西暦2015年を迎えているのだろうか。