狭筵

はい

今週のお題「今年買ってよかったもの」〈2014年をふりかえる 2〉 実況パワフルプロ野球2014

今週のお題「今年買ってよかったもの」〈2014年をふりかえる 2〉

 

今年買ってよかったもの。それは「実況パワフルプロ野球2014」だ。 

 

コナミから出ている野球ゲームのシリーズ。初めの作品が出たのが1994年だから、今年で20周年になる息の長いシリーズと言えるだろう。

面白いところは、動かすキャラが非常にデフォルメされたキャラであるのに、他方、非常に「リアル」な動きをする点だ。

まず前半部分、キャラクターたちのデフォルメさ加減について考えてみよう。もうこのシリーズが長いせいかあまり気にされないが、パワプロ君やその仲間たちの造形はおかしい。

ドラえもんみたいな手でバットを持ち、球を投げている。そして一番おかしいのは足の部分で、胴体から繋がらない足の部分があり、いわゆる脚が存在しないのだ。脚の部分は、向こう側が見える状態だ。

こんな感じで本来の人間の形とは程遠い、かわいらしく二頭身にデフォルメされたキャラがパワプロの特徴だ。一見するとリアルな人間とは程遠い。

 

しかしである。彼らの動きは作品を追うごとになめらかになり、「リアル」に捕球や打撃など野球の動作をこなす。実在するプロたちのバッティングフォームや投球フォームも、デフォルメされた造形であるにもかかわらず素晴らしい再現度でなめらかにこなす。そしてサクセスモードとかで出てくる可愛い女の子が照れてる時とかの内股の表現なんかを足の部分だけでしてしまう。これもすごい表現だと思う。

 

ゲームはどんどん進展して、現実に近い色合いや世界、人間の造形を描くことが可能になった。パワプロのキャラは、実はそうした進展のかなり古い段階のスーパーファミコン時代の人物の造形のあり方だ。

そうしたキャラクタ造形がこの時代のゲームに生き残り、そして、その不自由ともいえる造形の中で「リアル」な動作の追究がなされている。これこそが、このアンビバレントさが、パワプロというシリーズが家庭用ゲーム機の歴史に果たした意義ではないかと思っている。

 

単純にリアルを追究するだけでは面白いゲームにはならない。テレビゲームというテレビの中のフィクションにおいて、どこに落とし所を持ってくるのか。どこをどう「リアル」にして、どこをフィクションにするのか。パワプロが20年も続いた理由は、そうしたアンビバレンスな部分への敏感な視点があったからではないか。

 

本作を充分に楽しみ、また来年以降も楽しんでいきたい。