狭筵

はい

独りただ崩れ去るのを待つだけ

岡真史という少年が12歳で飛び降り自殺したのは1975年のことだった。

その後両親の手で、彼が密かに認めていた詩が公刊された。

詩は陳腐なもので、12歳の出来る範囲での詩のように思える。

 

子どもの頃書いた詩を大人になって見つけて赤面する、という体験は、きっと多くの人がしていることだろう。今も目下中学二年生とかが作詩に励んでいるに違いない。彼らも将来自分の営為を振り返ることがあるだろう。

重要な点は、もう大人になって恥ずかしがったり懐かしんだりできない人間の詩を、12歳の詩を、それも両親が、よりにもよって、公刊したことだ。

極めてグロテスクな行為だと思う。

さっき岡真史のことを思い出して、本のことも思い出して暗澹たる気分になった。

 

本当は、うんこのこととか食べ物のこととかテレビの話だとか、季節や天気など、そう、何気ない温和で楽しい話題でブログを書こうとしていたのに。

 

新編 ぼくは12歳 (ちくま文庫)

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